アセットアロケーションでリターンが9割決まるという嘘

アセットアロケーションの解説で、その配分でリターンの9割が決まるという文章を多数見かけました

それに関する話です(ほぼ他の方のブログの内容ですが・・・)

この言葉だけからは読み取れない前提条件があり、「アセットアロケーションでリターンの9割が決まる」は嘘といって良いと判断しました

これに限らず、格言や結論は色々な前提条件による場合が全てといって良いです。鵜呑みにしないよう注意しないといけません



アセットアロケーションでリターンの9割が決まる

どんなクラス(株・債権・不動産・・・)にどれだけ投資するかで、投資のリターンがほぼ決まるという説です

私が見たほぼ全ての文章は前提条件が書いていなかったので、文章通り取れば、株式についていえば、いつ、どの商品を購入しても、大差ないということです

だから、アセットアロケーションを重視しましょうという流れもほぼセットです



んなわけあるかい!

誰もがそう思うと考えていたのですが、そうでも無いようです

かの有名なウォール街のランダムウォーカーにもそのような記載がありました
前提条件も記載ありませんでしたし、文章の流れからしても「文字通りの意味」と解釈するのが自然な記載でした

しかしですよ、簡単のため株に100%投資したと仮定して、アマゾンに100%投資するのと、何とか全世界インデックスに投資するのとで、リターンが9割方同じ・・・
いやいやそんなわけないでしょう、と思いました



9割の起源

調べようかと一瞬思いましたが、面倒なので放置していたのですが、
有難いことに、ファンドの海様で細かく確認されていました
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ポートフォリオ・パフォーマンスの決定要因

ゲイリー・P・ブリンソン、L・ランドルフ・フッド、ギルバート・L・ビーバウワー

-要約-
アセットアロケーションやマーケットタイミング、銘柄選択といった、投資のリターンを向上させようとするさまざまな行動のうち、どれがもっとも強くリターンに影響するのだろうか。調査のためにここでは、インデックスで構成され、長期投資に重きを置いたポートフォリオをベンチマークとして設定する。これと、米国で大型の年金として実際に運用されている91のポートフォリオのリターンとを、1974年から1983年の10年間について比較した。

調査結果によって示されたのは、マーケットタイミングや銘柄選択よりも、アセットアロケーションが最も大きくポートフォリオのリターンに影響を与える、ということだ。トータルリターンのうち93.6%がアセットアロケーションによる変動量であった。

調査期間におけるベンチマークポートフォリオの年間リターンは平均で10.11%。一方で、現実の91のポートフォリオの年間リターンは平均で9.01%、そして現実のポートフォリオはアクティブに運用されており、その管理コストは平均で年1.10%だった。

このアクティブな投資行動は、個々の現実のポートフォリオのリターンには大きな影響を与えており、プラス方向へは最大で年間3.69%、マイナス方向では最大で年間4.17%の変動要因となった。

結論として、マーケットタイミングや銘柄選択はリターンに影響を与える行動ではあるが、アセットクラスの選択とその重み付け、すなわちアセットアロケーションが与えるリターンへの影響からすれば、それはごくわずかなものだといえるだろう。

-初出-
Financial Analysts Journal (July/August 1986)
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同じくファンドの海様より
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“銘柄選択はリターンにとって重要ではない”というのはどういうことでしょう? 銘柄選択が重要でないなら、どんな銘柄を選んでもいいのでしょうか? この結論だけを見てしまうとそう誤解されても仕方がないのですが、正しくはそうではありません。

この調査は、インデックスで構成されたポートフォリオをベンチマークに使っています。そして、そのベンチマークに対してリターンを向上させようとマーケットタイミングや銘柄選択を駆使したとしても、大してリターンに影響はなかった、と結論づけたのです。

ですから、少なくともインデックスに対抗できる程度の銘柄選択をしたうえで、それをさらに向上させようと銘柄選択に注力しても“大した影響はなかった”ということであって、どんな銘柄を選んでも関係ない、という意味にとるべきではないのです。
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また、アセットアロケーションの寄与度=全リターン-銘柄選択によるリターン-タイミングによるリターンとしているようです
この計算式も、アセットアロケーション、銘柄選択、タイミング以外の寄与度は無いのか、という疑問もあります

式を入れ替えて、銘柄選択によるリターン=全リターン-アセットアロケーションの寄与度-タイミングによるリターン、としたら、銘柄選択によるリターンは大きくなるのではないでしょうか



9割の前提

調査対象は、米国で大型の年金として実際に運用されている91のポートフォリオ、つまり、長期投資に重きを置いたり、年金運用したりするファンドでした

インデックスファンド並みに銘柄選択を豊富にしたうえで、長期投資・年金運用という保守的な運用をするファンド間での比較です

↑これは推測ですが、長期投資に重きを置いたり、年金運用するファンドがアマゾンとアップル50:50のポートフォリオにするぜ!はあり得ないでしょうから、間違いないでしょう

更に、長期投資前提なので、高い所での売り逃げもないことでしょう
タイミングを計るといっても、アセットアロケーションの一部をリバランスする程度のはずです

↑これも推測ですが長期投資に重きを置いたり、年金運用するファンドが、今年は株100%!来年は暴落を読んで現金100%!もあり得ないでしょうね

「アセットアロケーショで9割決まる」は、「大型年金ファンドのリターンはアセットアロケーションで9割決まる」ということでした

今度は、そりゃそうでしょう、としか言いようがありません

十分な分散投資ですから、非システィマティックリスク(ある企業が、例えば新商品の発売や天災などで被るリスクのこと。ウォール街のランダムウォーカーを読みましたにもう少し詳しく記載)は排除されています

少なくとも数百銘柄に投資しているでしょうから、多少銘柄を入れ替えたところで大差が無いのは当たり前です

強いて言えば、タイミングを計ってもうまくいかなかった、というところは参考になるかな、程度です



格言や名言は前提条件の抜け落ちに注意ですね

アセットアロケーションでリターンの9割が決まる、は前提条件として大型年金ファンドを前提としていました

つまり、前提条件なしの「アセットアロケーションでリターンの9割が決まる」は嘘と判断します(あえて嘘という強めの表現を使っています)

短くキャッチーにしたいのは分かりますが、せめて、十分に分散されたインデックスファンドではアセットアロケーションでリターンの9割が決まる、などの表現にすべきと考えます

まあ、格言や名言は短くまとめないといけないので、前提条件が抜けるのはある程度仕方ないですが、これはちょっと酷いですね~



まとめ

「アセットアロケーションでリターンの9割が決まる」というのは、長期投資、年金運用用のインデックスファンド間を比較したときの結論のようです
「」を素直に読めば、資産クラス内でどんな商品を買おうともリターンにはほとんど関係ないとしか読めません

よって、アセットアロケーションでリターンの9割が決まるというのは、嘘と判断します









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